〈健康〉 潰瘍性大腸炎

若い世代に多い指定難病
近年、患者数が大幅に増加している
潰瘍性大腸炎のタイプ(罹患範囲)
潰瘍性大腸炎のタイプ(罹患範囲)

 今回は、厚生労働省の指定難病の一つである「潰瘍性大腸炎」について、岡山大学病院消化器内科の講師を務める、同病院・炎症性腸疾患センターの平岡佐規子副センター長のお話しです。

複数の要因が重なり合って発症

 かつては欧米諸国に多く、わが国では希少疾患と考えられていた炎症性腸疾患ですが、近年は特に急増しており、潰瘍性大腸炎の患者数は約18万人、同じく厚労省の指定難病であるクローン病の患者数は約4万人に達しています。
 この数は、今後も増えるだろうと予想されています。
 潰瘍性大腸炎は大腸に慢性の炎症が生じ、潰瘍などを生じさせる疾患で、20代の若い方を中心に発症します。
 男性に多いクローン病と比べ、発症の男女差はありません。
 発症する正確な原因は不明ですが、①遺伝的要因②食べ物や化学物質などの環境因子③腸内細菌④免疫異常――など、複数の要因が重なり合って発症するのではないかと考えられています。

下痢や血便発熱などの症状がある

 初期には腹痛とともに粘血便などが生じ、その後、下痢や血便などの症状が現れるほか、発熱や体重減少などの全身症状を呈することもあります。
 これらの症状が、良くなったり、悪くなったりを繰り返すことが特徴です。これを臨床経過による分類で、再燃寛解型と呼んでいます。
 炎症や潰瘍などの病変ができる場所は基本的に大腸に限られます。
 通常は、肛門に近い直腸から始まり、上の方に広がっていきます。その炎症の範囲によって、①直腸炎型②左側大腸炎型③全大腸炎型の三つに分類されます。

寛解を導入し維持する治療法

 診断では、潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎、大腸憩室炎など、似たような症状が現れる疾患との鑑別が大切です。
 そのため、大腸内視鏡検査などの画像診断に加え、便潜血検査や血液検査などを行うとともに、大腸粘膜の一部を生検し、診断を確定します。
 便の回数や血便の程度、炎症の程度などによって、①軽症②中等症③重症に分けられ、それぞれに応じた治療法を選択します。
 治療には、炎症を抑え症状を良くする「寛解導入療法」、良い状態を維持する「寛解維持療法」があり、基本的に薬物療法となります。ただし、薬剤の効果がなかったり、緊急時には「手術」を行うこともあります。
 薬物療法で基準薬として使われるのが、「メサラジン」「サラゾスルファピリジン」などの「5―アミノサリチル酸製剤(5―ASA製剤)」です。これには、経口剤として錠剤と顆粒剤の種類があります。
 主治医の指示通り、処方された5―ASA製剤をきちんと服薬することで、8割以上の患者さんで寛解を維持できたというデータもあります。
 症状が落ち着いた場合でも、再燃を予防するために服薬する必要がありますので、自己判断をしないようにしてください。
 こうした薬剤で効果が不十分な中等症以上であれば、炎症抑制作用のある「副腎皮質ステロイド」を使用します。これには、経口剤、注射剤、坐剤や注腸剤などがあります。
 合併症である関節炎や皮膚症状にも有効です。
 ただし、使用が長期に及ぶと副作用が生じやすいことが指摘されていますので、徐々に投与量は減量され、中止していきます。
 加えて、これらの標準治療で寛解導入に至らなければ、異常に活性化した白血球を血液中から取り除く「血球成分除去療法」、免疫抑制薬の「タクロリムス」「シクロスポリン」、もしくは生物学的製剤である「抗TNF―α抗体製剤」の「インフリキシマブ」「アダリムマブ」「ゴリムマブ」による治療などが行われます。
 さらに、「JAK阻害薬」である「トファシチニブ」のほか、「抗α4β7インテグリン抗体製剤」である「ベドリズマブ」も使用できるようになる予定で、難治性の潰瘍性大腸炎に有効性を示す薬剤の選択肢が増えています。
 なお、「5―ASA製剤」で寛解維持ができない患者さんには、免疫調節薬である「アザチオプリン」を投与することもあります。

定期的に受ける内視鏡検査を

 薬物療法の効果がない、あるいは大量の出血があったり、大腸に穴が開いた場合、さらには、がんが合併している場合などは手術の適応となります。
 また、中等症以上の再燃を繰り返す場合も手術を検討します。
 近年では、人工肛門を作るとしても一時的なものがほとんどで、炎症を起こす直腸粘膜をほとんど残さずに肛門を温存する術式が主流になっています。
 この術式では、大腸を切除後、回腸で袋を作って肛門管と縫合します。
 寛解が導入できれば、過度に刺激的な香辛料や薬味、多量の炭酸飲料やアルコールを避けること以外、特別な食事制限も必要ありません。また、妊娠や出産も可能であり、健常者と同じような生活が可能です。
 現在のところ、完全に治す治療法は確立されていませんが、長期間にわたって寛解状態を維持しておられる患者さんも大勢います。
 疲れたら休むなど、疲労やストレスをためないよう健やかに過ごすことがなによりです。
 潰瘍性大腸炎を発症すると、発症から10年以上たった全大腸炎型では大腸がんの発症リスクが高いことが分かっています。
 症状が落ち着いていたとしても、定期的な大腸内視鏡検査を受けるようにしてください。